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  • 執筆者の写真ESI PIANO STUDIO

子供たちが冷蔵庫から手づかみでかぶりつくところ


Today's BGM

Beethoven Piano Concert no.5 op.73 2nd mov.

Friedrich Gulda (pf.) / Horst Stein (cond.) /

Wiener Philharmoniker (orch.)

すっかりポカポカ陽気になりました。

おうちで窓を大きく開けて外からの柔らかな風を感じながら、もしくは外を歩いてキラキラ眩しい緑を楽しみながら、どちらでもお菓子が美味しく感じます。

粉モノ好きの私から今日は一つのお店を紹介させて下さい。

知る人ぞ知る老舗の名店、神田淡路町にある近江屋洋菓子店です。

ここのフルーツケーキは焼き菓子(ソフトの部)では同率一位と言っていいくらい美味です。

ご覧の通りレトロな包装紙に包まれた中身のケーキたちは華美ではないけれどキュートでありながらきちんと折り目正しい雰囲気。

店内も天井が高く、今風な感じではないけれど清潔感のあるお店です。

店員さんもあれこれ迷っている時は少し離れた所で静かに見守って下さり、決心したり、逆に悩んだりしているとスッと近くに来てくれて対応して下さいます。

何故こんなにもここのお菓子と佇まいに心惹かれるのか、それは懐かしさにありました。

30年以上前に亡くなった私の祖父は洋菓子職人でした。

私が物心つく頃には現役は退いていましたが、妹と共に祖父にパンの焼き方を教えてもらって一緒に捏ねたり焼いたりした事、当時珍しかったHELLO KITTYの可愛いラッピングバッグをどこからか調達して来てくれ、そこに焼き上がったパンを店員さんに扮して入れて、お客さんに扮して食べた事が嬉しくてならなかった思い出が鮮烈に記憶に刻まれております。

そのセピア色になった思い出をすぐさま呼び覚ましてくれる、セピア色っぽい、そして愛情に包まれたような空気感なのです。

そして更に心惹かれるもう一つの理由がHPにありました。

『近江屋洋菓子店は季節の素材、そして新鮮さをもとめて毎日、店主が市場で直接仕入れる店です。近江屋の菓子は「わっ、きれい」とか、「カワイイ!」というものではないかもしれません。焼きっぱなし、切りっぱなしの菓子です。

リーズナブルだけどチープではないものを、気楽に買える。子供たちが冷蔵庫から手づかみでかぶりつくところを考えて、材料は最高のものをおしげなくふんだんに使います。工場のオーブン、ミキサーなど最高のものを導入しています。そして職人たちにおごりはありません。』

『う〜ん』と納得してしまいました。

なんと素敵な企業理念でしょう!

見た目もお値段も良いものが本当に良いものなのか。。。

中身はさほどのものではないのに、もしかするとさほどのものではないからこそ、見た目を良くしようとする意志が働き過ぎてしまっている物事を見かける事が食べ物のみならず、他の分野でも多々見受けられます。

時にニセモノを本物のように装っている事すらあります。

見かけに左右されずに真価を判断できるかどうか、という事はとても大切です。

そして最後の『職人たちにおごりはありません。』という一文。

天の祖父に向かって「私もこうありたい!」と呟きながら最高の材料で愛情を持って作られたケーキを手づかみでかぶりつきました。

東京都墨田区にて

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