• ESI PIANO STUDIO

私の森の歩き方は

いよいよ2017年も終わりに差し掛かっております。

今回の年末年始のお休みは私の都合で通常よりずっと短いものになってしまい、よって新年を迎えるための準備時間も短くなってしまうので、大掃除は無理だなぁ、と半分以上諦めてしまっております。

先日、お忙しいご両親に代わって毎週レッスンの付き添いをして下さっているCh.c.のS君のおばあちゃまより1冊のご本をオススメして頂きました。

まずこのタイトルと装丁でグッと惹かれてしまいませんか?

普段ピアノを触っていると鍵盤の部分だけに気を取られがちな私たちですが、このタイトルを見た途端に心を鷲掴みにされ、すぐさま読みたい本にリストアップしながらも1年以上そのままになっていた本、宮下奈都さんの『羊と鋼の森』でした。

ちょうどタイミングよく軽い風邪をひき、温かくしてお布団に入る時間を作ろうとしていた中、読み始めたら止まらない、あっという間に読んでしまいました。

更にもう1週間お借りする事をお願いして、2回目は言葉ひとつひとつを味わう様にじっくりと読ませて頂き、今後も折に触れ読んでいきたいと思いましたので結局購入するに至りました。

とても美しい本ですので皆さんにも是非読んで頂きたくレッスン室に置いておりますので、読んでみたい!という方はご遠慮なく仰って下さいね。

よって、内容については極力語らない事と致しますが、温かな感動に満たされている今、お話してしまうのを我慢するのがなかなか困難です。

正しいとかどうかという基準がない世界にいる不安感と戦っている全ての人たちに勇気とエールを送ってくれる、そんな1冊です。

それも「頑張ってね!」と肩をポンとたたかれるような応援ではなく、そっと優しく手を握ってくれるような応援です。

主人公のピアノ調律師、外村くんは北海道の山間の小さな集落の出身です。

故郷の情景が頻出するのですが、その美しい描写はすぐさま緑の中にいる時間が今よりずっと多かった私の幼少時をくっきりと思い起こさせてくれ、嬉しい懐かしさで心が満たされる事もありました。

更には外村くんのおばあちゃまが天国へ行ってしまうという場面では、私も11月に祖母を亡くした事もあって思わず涙がこぼれてしまいました。

この作品は2016年の本屋大賞を受賞されましたが、今年2017年の受賞作『蜜蜂と遠雷』もピアノコンクールを舞台にしたお話の様で、2年連続でピアノが前面に展開される小説だという事がとても興味深いです。

以下に特に心に深く刻まれた美しい言葉のほんの一部を私自身の為に残します。

『どうしようかな』と思われている方はご参考までに是非共有しましょう。

『読む!』と決めた方は読まれない方がいいかも知れません(特にネタバレという事ではないですが)。

『才能という言葉で紛らわせてはいけない。あきらめる口実に使うわけにはいかない。経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう。』

『音楽は人生を楽しむためのものだ。決して誰かと競うようなものじゃない。競ったとしても、勝負はあらかじめ決まっている。楽しんだものの勝ちだ。』

『努力していると思ってする努力は、元を取ろうとするから小さく収まってしまう。自分の頭で考えられる範囲内で回収しようするから、努力は努力のままなのだ。それを努力と思わずにできるから、想像を超えて可能性が広がっていくんだと思う。』

東京都墨田区にて